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最近、増加しているうつ病という現代病ですが、これは精神疾患ではなく、脳の病気といわれています。社会に問題があるとはいえ、対処法を理解しておく必要があると思い、ちょと焦点を当ててみました。


うつ病の症状

1.抑うつ気分

「ゆううつだ」「何の望みもない」「落ち込んでいる」「悲しい」など、思い悩んだ状態。本人の言葉もしくは、今にも泣き出しそうな表情や、憔悴しきった雰囲気が見て取れるため、周囲の人が気づく場合がある。こうした症状は午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善することが多いとされている。

2.興味の喪失

これまで楽しんできた趣味や活動に、興味や喜びを持てなくなった状態。「何をしても面白く感じない」、「人と話すのが好きなのにかえってうっとうしく感じる」、「趣味に打ち込めない」など、関心や欲求が著しく低下する。その変わりぶりは周りから見ると、人が変わってしまったように思えるほど。

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3.食欲低下

一般的に、うつ病では食欲が低下することが多い。そのため体重が急激に落ちてしまうことも珍しくない。「何を食べてもおいしくない」「お腹がすかない」と言いながら、何か食べないといけないと思うため、食べ物を無理やり押し込んでいることもある。それとは反対に食欲が増して、甘いものなど特定の食べ物ばかりをほしがる例もある。

4.精神状態が安定しない。

体の動きが遅くなったり、口数が減り、声も小さくなるなど、周囲の人から見ても分かるほどの症状が見られる。また反対に、じっとしていられず、落ち着きなく体を動かしたり、歩き回るようなこともある。この焦燥感が強いときは、本人はつらさを解消するために焦って話し続けるなどといった行動に出ている場合がある。表面的には元気に見えてしまうので、周囲の方は注意が必要。

5.無気力

何もしていないのに、ひどく疲れを感じたり、体が非常に重く強い倦怠感を感じる症状が見られる。気力が低下して何もする気がおきず、洋服を着るといった日常的なことにさえ時間がかかってしまう。本人は、何とかしなければならないと気持ちは焦るが、どうしても気力が湧いてこないといった状態。

6.罪悪感を感じる

典型的なうつ病では、特に理由もなく自分を過剰に責めたり、過去の些細なことを思い出しては悩むといった症状が見られる。自分を責めるあまり、「自分はこの世からいなくなった方がよい」と思いこんで、会社の業績が落ちたことまでを妄想的に自分の責任だと思い込むようになったりする。

7.寝付けない、早く目が覚める

うつ病では、不眠がよくあらわれる。寝付きが悪くなるばかりでなく、夜中あるいは早朝に目が覚めてしまうことがある。特に、自分が起きるつもりではない早朝の時間帯に目が覚め、そのあと眠れないことが頻繁にある(これを早朝覚醒という)。このため熟睡感がなく、体調も優れないため、すぐに起き上がることもできない。患者さんによっては反対に、夜の睡眠が極端に長い、あるいは日中も寝てばかりいるといった過眠になるケースもある。生命を維持する上で欠かすことのできない食事と睡眠に異常をきたしてしまうため、生きるためのエネルギーがどんどん低下する。

8.集中力の低下

注意力が散漫になり、集中することができなくなるため、仕事や家事が以前のように進まなかったり、できなくなったりする。また、決断力が低下し、あれこれと考え込んでしまうために何も決められない状態に陥ることがある。このため、うつ病の患者さんは悲観的な決断をして会社を辞めてしまったり、離婚をしてしまうことがある。決断しないようにすることが重要となるため、周りの配慮も不可欠となる。

9.不安感

うつ病の比較的初期の症状として、ほとんどの場合、本人は「不安感」に苛まれる。うつ病によっていろいろな症状が重なり、今までできていたこともままならなくため、「自分はこのままどうなってしまうんだろう」「周りからどう見られているんだろう」「一人でいることがたまらなくつらい」といった不安が次々とおそってくる。不安なままでは治療もままならないため、まずは患者さんの不安感を軽減させることが重要となる。

10.自殺を考える

気持ちが沈んでつらくて仕方がないため、死んでしまった方がましだと考える症状が見られる。うつ病で最も気をつけなければならないのは、自殺。一般的に、気分が沈みきって何もする気力がない状態では、自殺をする気力も行動力もわかない。しかし、少し症状が良くなると、死にたいという感情が湧けば、すぐに実行に移してしまう。治療の経過の中で死んでしまいたいという気持ちは、繰り返し本人の気持ちの中に湧いてくる。自殺念慮がある場合は、すぐに専門医の診察を受けること、そして主治医および家族など周囲の方との間で絶対に自殺はしないことを約束することが重要になる。自殺念慮が非常に強い場合は、入院して治療する必要がある。

11.特徴的な身体症状

・不眠
・食欲不振
・全身倦怠感
・痛み(腰痛、肩こり・肩の痛み、頭痛)
・めまい
・胃腸症状(下痢や便秘)
・発汗
・性欲減退、インポテンツなど


うつ病の診断

現在のところ「うつ病」などの精神疾患を診断するための決定的な検査方法はありません。つまり、血液検査や画像検査ではうつ病を診断することができないため、医師と患者さんあるいは家族などの周囲の方との面接、問診から得られた情報をもとに診断します。

問診の例:

・どんな症状がありますか
・症状はいつ頃からそのくらい出るようになりましたか
・症状が出てから生活はどのように変わりましたか
・身の回りの環境が変わりましたか
・仕事や人間関係でストレスになっていることはありますか
・自分の家族や育った環境、現在の環境について聞かせてください
・お酒やたばこの量について、教えてください
・自分はどんな性格だと思いますか
・いままでどのような診断を受け、どのような薬をもらっていましたか。


うつ病の原因

うつ病は、患者さん本人の気持ちの問題ではなく、脳の働きや能力が低下したために様々な精神症状や身体症状を呈する病気です。億単位の数の神経細胞が複雑に絡み合っている脳は、人間の臓器の中でもメカニズムの解明が最も遅れているのです。従って、うつ病をはじめとするあらゆる精神疾患についての発症のメカニズムは十分解明されていません。

3種類の神経伝達物質であるモノアミン(ノルアドレナリン,セロトニン,ドーパミン)が不足するとうつ病を発症するという神経化学上の仮説がありますが、ホルモン異常、ストレスがその原因になるという考え方もあります。


うつ病の治療

十分な休養をとり心身の負担を取り除き、脳の疲れも取ることが大切です。また、十分な睡眠時間をとることも休息には重要ポイントのひとつとなります。それと併行して、薬による治療で脳内神経伝達のバランスの乱れを調整します。うつ病患者さんの多くが薬に頼ることを甘えていることと考え、治療を受けることに抵抗を感じるようです。しかし、どんなに心身を休めても、からだの中で起こっている異常をきちんと修正しなければうつ病は治りません。
また他の病気と同様に、放っておくとますます悪化してしまいます。

病医院での診察から治療までの流れは、ごく一般的な体の病気の診療とは変わらず、十分な問診を行ったあと、くすりなどによる治療が行われるようになります。主な問診の内容は、「どんな症状があるのか」、「いつごろからそのような症状が出るようになったのか」、「大きな環境の変化などはなかったか」などの話しを聞きながらうつ病を誘発したきっかけなどを確認します。

うつ病の症状が軽減されるまでにある程度の時間を必要とする場合も多いとされています。うつ病が「病気」であることを理解して、症状が悪化する前に早期に受診し適切な治療を受け、焦らずじっくり治療に取り組むことが重要です。

脳が疲れ果ててしまい、エネルギーが著しく低下した状態になっています。したがって、まずは休養をとることがとても大切です。もともと、うつ病になりやすい方というのは、真面目で几帳面、仕事熱心で責任感の強いタイプに多いため、休養をとることが簡単ではありません。しかし、足を骨折した人が痛いのを我慢して歩こうとするのが無理であるように、限界を超えているにもかかわらず休養を取らなければ、さらに脳が疲弊して、症状を悪化させてしまいます。

仕事をしている人には、積極的に休養または休職をすすめます。どうしても仕事を休めない場合には、仕事量や就業時間を削減して負担を軽くするようすすめます。また、主婦の場合には他の方に家事などを分担してもらうようすすめ、何よりも心身の負担を減らすことが大切となっています。

うつ病の治療には数ヶ月から1年以上かかることもあります。それゆえ、長期的に考えてゆっくりと焦らずに治療に専念することが望ましいでしょう。


うつ病の周囲接し方

周囲の人の対応の具体的なポイントには次のようなものがあります。

“頑張りたくても頑張れない”うつ病患者さんにとって、「頑張って」などという励ましの言葉や、「だらしがない」「怠けている」といった叱咤は逆効果になります。励ましや叱咤によって「自分が悪いから」と、さらに自分を追い込んでしまいます。

夕食のメニューなどの生活の小さなことでも、考えや決断を求めることはなるべく避けましょう。家事などの日常生活上の負担を減らしてあげることです。
また、「仕事を辞めるかどうか」というような、重要な決定は先のばしにさせるよう心がけましょう。

外出や運動を無理にすすめず、とにかくゆっくり休ませましょう。気晴らしのために旅行に誘ったりすることは、かえって患者さん本人にとっては負担になることが多いため気を付けましょう。

医師による多くの情報を正確に伝えるため、できる限り病医院に付き添い、受診に同席するようにしましょう。

自己判断でくすりの服用をやめると回復を遅らせてしまうため、きちんとくすりが服用できるよう配慮してあげましょう。うつ病をきちんと理解していない周囲の人が、「精神科の薬をそんなに長く飲んで大丈夫?」といったことを患者さんに言ってしまうことにより、患者さんは不安に思って服薬を中止してしまうことがあります。

うつ病と診断されると、「なぜ病気になったのか?」と、とかく発症に至った理由を追求してしまいます。何かがきっかけとなったとしても、実際にはさまざまな要因が関係しており、特定することはできません。発症に至った理由を深追いするよりも、患者さんがどうすればよくなるのかを考えながら、普段と変わらぬ態度で接して、暖かく見守る気持ちが大切です。

まず変調を感じたら、医師に相談することが大切ですが、本人に困難な場合、周囲の人の勧めが必要です。まず相談する、カウンセリングを受けるという気軽な考えが大切です。