アニメの話題に触れたので、私が個人的に気に入っているアニメの話。そう、このブログをご覧のほとんどの方々には、ものすごく古い話になると思います。そう。テーマは「エイトマン」。週刊少年マガジンに1963年5月から連載。TVアニメとしては、同年11月8日から翌年12月31日まで放送されたアニメです。
引用元:dailymotion
鉄腕アトムを越えるために生まれた漫画というTV界の時代背景があるとのことですが、アトムはアトムで別の価値があるので、私は比較はしません。
しかし、当時、これほどまでに、少年たちに科学の夢を見させたコミックがあったでしょうか。作者、桑田次郎氏の絵は、それまでのコミックと違い、どこか大人びた香りのする、別の意味では良い意味でバタ臭い、そう子供には「背伸びして読む漫画」のような感覚に陥らせる画風でした。
それから、ストーリーの科学機器のリアリティのレベルが高かった。
私がパソコンのキーを初めてたたいたのは、1980年代後半です。それよりも昔、おそらく大阪万博(1970年)の頃はまだ電子式卓上計算機が馬鹿でかったですね。でももっと遡らないといけないんです。計算尺(なんて知らないですよね)に触れる前、超小型電子頭脳を頭に、超小型原子炉を胸に搭載するスーパーロボットを紙の上とはいえ創造してしまったわけですから、当時25歳のこの原作者「平井和正」という人物、一体どうやって、まだ曖昧模糊だったはずの最先端科学を集約したのでしょうか。後に「幻魔大戦」を手掛けるSF作家となって行くのですが、私は密かに、以前このブログで書いた「ニコラ・テスラ」の作品群と関係があるのではないかと考えています。
ざっと次のようなメカが登場します。
レーザー光線銃
中性子爆弾
小型電子頭脳
小型原子炉
元素変換装置
反重力発生装置
振動砲
超高速回転浮遊装置
やはり、テスラが潜んでいますね。
エイトマンは静電気や熱に弱いはずのICを搭載しながら、原子炉なんていう物騒なものを胸に抱え、超高速で走り回り、高熱を浴びせられても耐え抜き、人間の心を持つというスーパーロボットでした。
今の科学で、コンセプトを作り直せば、相当異なるものになると考えますが、1960年代にあれだけの科学を集約させるとは見事でした。
SFに登場する超常的な道具、兵器などは、その理論背景が乏しいものが多いような気がします。しかも蓋然的で、いきなり説明もなしに当たり前に登場します。しかし、エイトマンでは、とんでもなく時代を越えたモノには違いないでですが、その発明者と理論背景が付いてきます。もちろん現実にはありえなくとも、リアリティをもった想像の産物がそのコミックの世界に展開するのは、私には十分許せたし、現実と夢をつなげることができました。一般のSFには現実と夢が簡単にはつながらないものが多いんです。(SFファンの方には申し訳ない)
さて、別の側面を語らなくてはなりません。エイトマンにはダークサイド(暗黒面)があります。ストーリーそのものにも、ロボットの悲哀が語られていますが、気になったのは、漫画の世界の外側です。
最後の放送が大みそかだったかどうかは記憶にないですが、確か、歯切れの悪い形でアニメが終わったような気がします。作者がある問題を起こしたのが、その翌年の2月という記録になっているので、ちょっとつじつまがあいませんが。きっと既に何かが合って、歯切れの悪い終わり方だったはず。
ここに書かれるのは、ご本人たちが好まないでしょうから、さらっと書きますが、作者の拳銃不法所持、主題歌歌手の殺人、出版社の倒産、掲載誌の休刊とエイトマンに関わった人物や会社にはトラブルが多い。ツタンカーメンのようだ、「エイトマン」は魔性の作品だと評する人も居ます。
今まで何度か続編、復刻版などを目にしました。確か後楽園でのイベント(行きました)もあった。
でも、一向にもやもやは収まりませんでした。
21世紀の科学で復活ということも想像と期待をしてはいるのですが、エイトマンは、あの時代の、あの時代背景、つまり日本の成長がこれから始まる時、アニメ黎明期という条件があったからこそ、時代を越えた作品だったのかもしれません。