12日、iPS細胞の移植手術が世界で初めて行われ、成功したそうです。「加齢黄斑変性」の患者の網膜にこの細胞が移植されたそうです。
黄斑とは網膜の中心部分にある視力を維持するために重要な部分。これが加齢により障害を来たす病気が「加齢黄斑変性」ですが、対象物が歪んで見えたり、失明の原因になるといわれています。
ちょっと気になるので、予防法を調べましたが、植物系カロテノイドの「ルテイン」が眼病予防に良いそうです。カロテノイドについては、このブログでも、アスタキサンチンの記事で書きました。
市販されているサプリもいろいろありますが、手軽に手に入るものでは、リフレ ブルーベリー&ルテインなどがあります。
さて、興味深いのは、そのiPS細胞。
機械は部品が壊れたら、その部品を交換すれば良いですが、人間の場合そうはいきません。
擦り傷や単純な骨折などまで、人間には再生能力があるので、有る程度の怪我はほぼ元通りに治ります。
しかし、ガンで取り除かれた内臓などは、元通りにはなりません。
失われた器官をまた再生できたら、どんなに素晴らしいことでしょうか。
今、医学研究の世界では、その実現に向けて一歩前進しました。再生医療を可能にするiPS細胞(人工多能性幹細胞)が作られました。もちろん、まだ初期段階であり、人の器官を再生するにはたくさんの課題があります。
人間の細胞は一つの細胞から分裂を繰り返し、60兆個の細胞になります。単細胞が、独自の機能を持った組織、器官に分化するわけです。一旦個別の組織になった細胞は、別の組織にはなれません。胃の細胞は、心臓にはなれないのです。
しかし、人工的に手を加えることによって、別の組織を作る細胞を作ることができるのです。それがiPS細胞(人工多能性幹細胞)です。
遺伝子などを操作することによって生み出された、ほぼどんな組織や臓器の細胞にも変化できる可能性を持った細胞なのです。
ふつう、皮膚や筋肉、神経のように、すでに役割が決まった細胞の運命は変わりません。役割の決まった細胞になることを分化といいます。それを、もういちどあらたな運命を自由にたどれるような状態にすることを「初期化」といいます。2006年、京都大学の山中伸弥教授は、ウイルスでわずか4種類の遺伝子を送り込んではたらかせることで、皮膚の細胞を初期化し、iPS細胞を生み出すことに成功しました。
自然界で、高い分化能力をもった細胞は受精卵からつくられる細胞で、ES細胞と呼ばれます。しかしこれは人の生命の発生過程に関わるので、容易に実験できるものではなく手を付けることのできない領域にあります。応用性の研究対応としては、倫理性が絡むため扱いが困難です。
再生医療や新薬開発、疾病のしくみの解明と治療法開発など、iPS細胞の応用への夢は膨らむばかりです。
さて、ここで話は変わりますが、機械は、同じ部品から全体が作られているわけではありません。別々の部品群で作られたユニットを組み合わせて全体ができています。パソコンなら、ディスプレイとキーボード、IC基板などで構成されています。
しかし生物は単細胞が分裂して、特定の機能を持った器官になります。一つの構成要素から、全く別の機能を持ったものに変化するわけです。有る意味で飛躍です。
生物を有機体とも云いますが、有機体というものは、複雑化すると構成要素であった頃には想像できなかった機能を有するようになるとも言います。もともと潜在していた性質が表に出てきたという考えもできますが、潜在状態という状態は認識されていない状態なので、「無い状態」と同じと結論づける考え方もあります。複雑系の哲学にも同じような考え方があり、組織の全体の性質は、構成要素の単純な足し算ではないする考えがあります。
手塚治虫の「火の鳥」ではないですが、人間は生命を作ることはできません。まだそのヒントすら掴んでいないように思われます。しかし、iPS細胞によって生命存続の可能性を広げることはできそうです。
他変数関数には解けないものもあります。解答を近似するしかない方程式も多い。世の中の事象は他変数関数なので、未来は一般的い予測不可能です。しかし予測は容易にできないものの、仕組みが複雑化することによって、新しいものが生まれるのはもはや事実でしょう。
人間の歴史そのものもその結果であり、生物の魂や意識といったものも複雑化の産物のような気がしてなりませんが、後者にはこの考え方は飛躍しすぎであると、私もわかっています。
有機体の有り様を研究することによって、いろいろ新しい発見がありそうです。